第一分科会

写真:銀閣寺 from 京都フリー写真素材

「高強度光電場に駆動される固体電子ダイナミクスの実時間シミュレーション」

  • 講師:篠原 康 先生 (東京大学 特任助教 : 研究室HP)
  • 担当:影山 豪大 (東京大学 五神・湯本・井手口研究室 M2)
  • 担当連絡先:sec1_at_ymsa.jp (※担当連絡先はお手数ですが「_at_」を@に変えて頂きますよう、よろしくお願い致します。 )

紹介文

近年のコヒーレント光源技術の進展により、広い光子エネルギーに渡って、高強度なコヒーレント光発生が可能となった。

半導体のバンドギャップよりも十分小さな光子エネルギーを持った高強度なコヒーレント光を使うことで、半導体を代表とする様々な固体から高次高調波(入射光子の周波数の整数倍の光子が放射される現象)が観測されるようになった。

高次高調波に代表される、高強度電場に駆動される非摂動電子ダイナミクスの科学は主に気相で発展してきた。

気相の高次高調波発生過程はPaul Corkumによって提案された3ステップ模型と呼ばれる極めて単純な理論でよく説明が出来る。

一方、固体における高次高調波発生過程については、一般の固体に適用可能な統一的な理論的記述には至っていない。

固体は結晶構造、バンドギャップに様々なバリエーションがあり、様々な観点から研究が進展していくことが期待される。

量子系の非摂動ダイナミクスを調べる上では、コンピューターを駆使した量子系の時間発展をシミュレーションするアプローチが有効である。

量子系の基底状態を求め、それを始状態にしてレーザー電場を外場として導入したハミルトニアンを使って、時間依存Schrödingerの時間発展を数値的に計算する。

光を使った実験の多くは、実験的に観測しているのは放出される電磁波である。

各時刻の波動関数からカレント密度を評価し、そこから双極子放射を評価することで、実験で得られている放射電磁場のスペクトルと比較することが出来る。

こうしたシミュレーションを行う系が周期ポテンシャルを念頭に置いた固体の場合、自ずとバンド計算に付随した概念(結晶運動量、有効質量等)が表れる。

バンド計算は物理、物質科学といった分野では非常にポピュラーである一方、分子科学の分野ではそれほど一般的ではないだろう。

そこで、本分科会では欲張って、一次元模型を対象にしたpythonのコードを使って、バンド計算、そして時間発展計算のhands-on実習(各自の計算機を利用)を行って、固体からの高次高調波発生の計算を夏の学校期間中に出来る所までを目指す。

講義では、このhands-on実習で行うバンド計算と時間発展計算の背景にある理論や方程式を解説する。

また、バンド計算に馴染む良い機会なので、三次元バルク固体のバンド計算の半実習(各自の計算機を使った数値計算の遂行は任意)をオープンソースのコード(elkとabinit)を用いて行う。


担当者コメント

第一分科会では、東京大学の篠原康特任助教をお招きし、高強度光電場中の固体電子のダイナミクスを実時間シミュレーションするための理論について講義していただきます。

レーザーの出現により、高強度なコヒーレント光源が容易に入手可能になり、実験室レベルの実験系でも、物質の光に対する非摂動論的な応答を観測することが可能になりました。特に、高強度でパルス幅がフェムト秒程度のレーザーパルス光源を用いれば、高次高調波発生のような極めて非線形な効果により、アト秒のスケールでの固体中の電子のダイナミクスを観測することも可能になります。このような超高速な電子ダイナミクスを観測することは、原子間の結合などの急速な変化を捉える手段を開発する上で非常に重要な役割を果たすことが期待されます。

この機会に皆様も高強度光電場中の固体電子のダイナミクスの実時間シミュレーションの理論を身につけ、光に対する固体電子の応答に関する理解をさらに深めてみてはいかがでしょうか?皆様のご参加を心よりお待ちしております。