第一分科会

タイトル

「分子振動計算の最前線」

  • 講師:八木 清 先生 (理化学研究所専任研究員 )
  • 担当:織田 耕平 (北海道大学 武次研究室 D1)
  • 担当連絡先:sec1_at_ymsa.jp

紹介文

振動分光法は分子の構造や状態を鋭敏にプローブできる有用な方法です。近年では、観測されたスペクトルを帰属するため、計算を利用するのが一般的となっています。理論計算では、分子のどのような振動運動がどんなスペクトルを与えるかがはっきり分かるため、実験スペクトルを「疑いの余地なく」帰属できるからです。このスキームは大変に強力で、実験と理論のハーモニーを多く産み出し、基礎科学に留まらず、生命科学や材料研究など、幅広い応用分野まで波及しています。一方で、理論計算と実験結果が一致しない時は大変です。

実験的な難しさだけでなく、計算も完璧ではないため、双方に通じている(少なくとも言葉を理解できる)研究者が必要です。本分科会では、分子振動理論の基礎から最先端をカバーした講義を行います。講義内容は分子理論・計算が中心ですが、実験研究に携わる皆さんの参加も歓迎します。理論計算の経験者には入りやすい講義内容となりますが、量子化学や分子動力学の進んだテクニックを学ぶ機会になります。また、座学だけでなく、私達が開発している SINDO プログラム(https://tms.riken.jp/research/software/sindo)を用いたチュートリアル(*注)を実施します。講師と受講者の間(および受講者同士)で活発に議論できる講義にしたいと考えています。

本講義の概要は以下の通りです:

1. Born-Oppenheimer 近似、ポテンシャルエネルギー曲面、QM/MM 法

2. 調和振動子近似、非調和性

3. 量子化学計算を用いた非調和ポテンシャルの生成

4. 振動 self-consistent field(VSCF)計算と post-VSCF 計算

5. 座標変換、ローカルモード

6. 応用例:分子クラスター、生体分子、高分子材料

7. 展望:機械学習ポテンシャル、量子コンピュータ、など

*注)チュートリアルを実施するため、ノートパソコンを持参してください。スペック、OSは問いません。

第一分科会担当者コメント

第一分科会では理化学研究所専任研究員の八木清先生をお招きし、分子振動理論の基礎から、QM/MM 法との組み合わせによる複雑分子系への適用、さらには機械学習や量子コンピュータといった新技術援用の動向までをカバーした講義をしていただきます。

八木先生は振動状態計算プログラム SINDO を開発されており、2015 年には分子科学会の奨励賞を受賞(”非調和性を考慮した分子振動状態理論の開発と応用”) されている、まさに振動理論の第一人者です。

分科会では、パソコンを用いて実際に手を動かすチュートリアルもあり、必ずや分子振動理論への理解が深まることでしょう。演習があると聞き少し敷居が高く感じた方、ご安心ください!初学者をサポートできるような仕組みを目下検討中です(参加者間でラフに話し合う時間を作る?質問シートを作る?)。

八木先生のコメントにもありますが、実験系、理論系、経験の有無問わず議論のできる分科会にしたいと考えています。様々なバックグラウンドを持つ方の交差点になれば、分科会担当冥利に尽きます。皆さんの参加をお待ちしています!