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第三分科会

有機伝導体・有機エレクトロニクスのための物理化学

講師: 森 健彦 先生 (東京工業大学 教授)  

紹介文:
有機エレクトロニクスの世界で起こっている現象を理解するためには、分子性物質の伝導性について理解する必要があります。本講義では通常は固体物理の言葉で解釈されている事柄を、物質開発の立場から分子科学の言葉で理解し直すことを試みます。

 分子性結晶を理解するための出発点はエネルギーバンドですが、有機結晶のエネルギーバンドは無機物よりもむしろ単純明快です。伝導体であればフェルミ面が存在し、もし極低温まで金属的伝導性を保てばフェルミオロジーと呼ばれる手法で実験的に調べることもできます。しかしながら、フェルミ面をもつ物質はすべて金属のはずですが、多くの有機伝導体は半導体になります。金属・半導体転移のような性質を理解するためには電子相関とか電荷整列と呼ばれる現象を考慮する必要があります。要するに電子と電子の間にはクーロン斥力が存在するため、伝導体の物性はエネルギーバンドだけから予想されるのよりもかなり複雑になります。これに関連して磁性や超伝導のような性質も出てきます。

 有機半導体にはp型材料とn型材料がありますが、すべての分子はHOMOLUMOをもつはずですので、p型とn型があるのはおかしな話です。もちろんエネルギーレベルを考えればこうしたことはある程度理解できますが、電極があると有機分子のエネルギーレベルはかなり節操なく変化します。電界効果トランジスタのなかではエネルギーレベルがシフトしたり曲がったりしますが、100 V近いゲート電圧をかけてもエネルギーレベルのシフトは1 eV以下です。有機半導体中のトラップからの熱励起を考慮すればトランジスタ特性の温度依存性を理論的に導き出すこともできます。有機半導体を評価するときに使う移動度は、1キャリアあたりの伝導度に相当する量ですので、金属伝導に対応する状況では移動度は温度を下げると増加し、いわゆるバンド伝導が起こります。非常にきれいな有機半導体結晶のなかでは、このような「金属的伝導」が起こることが観測されています。

 こうした話題を通して、有機エレクトロニクスの背後で起こっている分子性物質のイントリンシックな伝導性について、これまでに分かっていることを明らかにしていきたいと思います。



担当:  鍋井 庸次 (総合研究大学院大学 山本研究室 M1)

担当連絡先:    sec3_at_ymsa.jp
※担当連絡先はお手数ですが「_at_」を@に変えて頂きますよう、よろしくお願い致します。

担当者コメント:

第三分科会では、東京工業大学の森健彦教授をお招きし、有機伝導体・有機エレクトロニクスの物理と化学を、基礎から最新の研究まで講義していただきます。森先生は有機トランジスタのための電荷移動錯体、有機半導体の開発や、有機超伝導体の電子状態の研究をされています。加えて、超伝導の理論研究にも精通されています。

 

 有機伝導体・有機エレクトロニクスの分野は、現在、有機合成や物理化学、デバイス工学、理論物理と様々な観点から研究され、非常に興味深い分野へと発展しています。本分科会ではこの分野を、物質開発の立場から理解し、有機物の伝導現象の本質に迫っていきます。基礎から扱っていくため、理論、実験、物理、化学に関わらず有機伝導体・有機エレクトロニクスに興味関心がある方は是非ご参加ください。    
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